平山
何年か前に、滋賀県警東近江署が京都市に住む市立高校2年の女子高生が、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。
  
逮捕に至る過程としては、彼女のポーチの中から、ビニール袋に入った覚醒剤と注射器が見つかって、覚せい剤所持での現行犯逮捕となり、さらに、尿から覚せい剤の陽性反応が出たため、同使用容疑で再逮捕となったとのこと。

何とも言えない不快感を覚える事件となるこのニュースを、当時ネットで見ていた時に、ふと、歌舞伎町は桜通りの傍にある月下美人というトルコ風呂が、ソープランドと名称を変えた頃からしばらくの間、他を圧倒する指名数を誇り、同じ週発売のグラビア記事で、何誌もの男性向け週刊誌に特集を組まれていた、No.1ソープ嬢の遥香と言うお客を思い出した。

初めて会った頃の彼女は、自衛隊出身ながらも私立の名門、青山学院大学に通う、美嶋と言う名の新人ホストを指名するために、毎晩のようにヌーベルアムールへ通い詰めていた。

ヘルプとして彼女の席に座った私は、芸能人で言えば、平山あや(写真)を想わせるぐらいに美形でスタイルがよいばかりでなく、その性格の優しさにも驚かされた。

普通、No.1ソープ嬢が、ホストクラブで酒を飲みながら、自身の正体を明かして仕事の話をするときには、泡まみれとなって疲れる作業を、数多くこなしてきたストレスを発散するためだろうか、たちの悪いお客へのサービスに関する愚痴を言うことはあっても、そのお客たちを褒めるなどということは滅多にない。
 
何とも愛らしい面差しを持った妙齢の女性の口から、今日は10本もこなしたから顎がおかしくなっただの、あそこがひりひりするだの、なかなかイッてくれないので腹筋が痛くなったというような話を聞かされたこともある。しかし、彼女は違っていた。1日に何本の指名が入っても、それを苦痛とは思わず、つねに感謝の気持ちを素直なまでに表情へと現わしていた。

また、源氏名を使わずに、本名の遥香という名で働いていたことにも驚かされた。その為に、多くの週刊誌でグラビア特集が掲載された時は、その記事を親戚に見られてしまい、それを聞いた家族からの追求を浴び、本名でソープ嬢などやる訳が無く、あくまで他人の空似だと言い張ったとのこと。

人に喜んで貰うことが、とても嬉しいとも常に言っていた。本当に可愛らしく性格のいい女性であったが、ただ、その優しすぎる性格と、緩い思考力は、歌舞伎町に巣食う邪まな男たちにとって、格好の食い扶ちとなっていた。

『巣窟』で紹介したナイトプリンスの飛鳥は、ヤクザとホストの違いを、彼なりの解釈で次のように述べていた。

いざ面倒な事が起こった時に、執拗に食らい付き、体を張って最後まで闘うのがヤクザであり、修羅場は御免と、貢がせた女からスタコラサッサと逃げだすのがホストである。続けて彼は、つまり自分らホストはヤクザ以下の最低の生き物であると、居直るように吐き捨てていた。

遥香がホスト通いから足を洗って、〇〇組のヤクザと付き合っているとの噂を聞いてから、数年の年月が経った頃だった。その当時、ラムールの早い時間に籍を置いていた私に、沖縄出身の美形ホスト、早瀬が、久しぶりに遥香が飲みに来ていることと、その変貌ぶりに驚かされたことを、悲しげな表情で伝えに来た。

本番で来ているとのことで、懐かしさも手伝って、私も彼女の席へ挨拶に行くことにした。軽く会釈をしてから、遥香が座った席の正面の椅子に腰を掛けて、彼女の形相をしっかりと確認したときの私は、思いっ切り唖然とさせられた。

遥香ということを前もって聞かされていなければ、彼女であるということを理解するのに、どれだけの時間が掛かるか分からないほどに、荒んだ肌とやつれた表情で、私に会えた懐かしさから笑顔となって開いた口の中には、隙間だらけで茶色くなった歯が、情けないまでに小さくなって生えていた。

数年前に会った時には、透き通るような白い肌と、これ以上ないような愛くるしい眼差しに、歯並びのよい口元から、秋波を漂わせていた遥香が、どうしてこんなにまで不快な醜い姿を晒すようになってしまったのかと、悲し過ぎるほどの胸の痛みが堪え切れず、私は直ぐに彼女の席から離れた。

後から早瀬に聞いた話によれば、毎月何百万も稼ぐNo.1ソープ嬢の遥香は、現在も付き合っている〇〇組のヤクザにとって、これ以上なき金蔓であり、二度とホストに入れ揚げたりしないようにと、その男の手で、常軌を逸するほどの量のシャブ(覚醒剤)に漬け込まれたとのこと。
 
ナイトプリンスの飛鳥が言っていたように、確かにヤクザは、自分の体や命を張ってまで女をものにすることもあるが、そうまでして自分のものにした女が、見るも無残な襤褸雑巾になるまで、手段を選ばずに、平然と金を吸い上げるようなこともする。

ホストで在りながら、自分のお客にシャブを勧める者も全くいない訳ではないが、ここまで酷い話は今までに聞いたことがない。やはり、表社会でも無く、裏社会とも言えないような、どこまでも中途半端な生き方をしている多くのホストと、完全なまでの闇社会を生きるヤクザとでは、稼ぎに対する思い入れが天と地ほどに違っているのだろうか。

どこまでも愛々しく魅惑的であった頃の遥香の姿と、この時に逮捕された女子高生のイメージが、何故か被さったように感じてしまう想いが、私の胸の内をやる瀬なくさせる。

その逮捕を切っ掛けとして、シャブからは完全に足を洗い、もしヤクザと付き合っているようなら、その男からも姿をくらますことで、この女子高生が、最後に会った時の遥香のような姿になど、決してならないで欲しいと願うばかりである。



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