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紅白初出場から、スケジュールに追い立てられる毎日となっても、彼女はネオレディースに通い続け、多忙のため来店の回数は減らざるを得なかったが、恋野の売り上げには、以前にも増して大きく貢献していた。
 
彼女の顔が日本中の多くの人々に知れ渡った為、日中どうどうと恋野に逢うことが難しくなり、必然的に二人は、彼女の超高級マンションで、半同棲的な生活を匂わせるようになった。
 
男女間においてはよくあることだが、どれほど社会的地位に差があり、女性の方が権力を持っていたとしても、逢瀬の時間を重ねるに従って、二人の立場はいつしか対等となり、気が付いたときには、男性の方が主導権を掌握する。
 
ホストとお客の関係でも、実際の処よくある構図ではあるが、その相手が人気演歌歌手ということもあって、どこか痛々しい感じがすることは否めなかった。
 
ある時、泥酔した彼女が、制止しようとするマネージャーを完全に無視して、その彼が駐車場から店の前まで運んできた彼女の車の、運転席へと強硬に乗り込み、自分が運転すると言ってきかずに発進させようとしていた。

その時、強引に扉を開き、すかさず彼女の襟首を掴んだ恋野は、運転席から無理やりに引きずり降ろして、人通りの全くない裏通りまで連れて行くと、正座をさせた状態で、人気歌手である自分の立場をわきまえろと厳しく説教を垂れた。少しく離れた距離から二人を見ていた私の眼に、その姿は、まるで彼が、彼女の父親でもあるかのように映っていた。
 
痴話喧嘩や、揉め事もだんだんと増えるようになり、特に酷かったものは、彼女が恋野のマンションで見つけた、何枚もの写真が原因であった。その写真は、彼女も店で何度か見かけたことがある、恋野を指名しているお客との、陰部もはっきりと写っている、淫らを極めた情交場面の数々であった。
 
我を忘れて厳しく彼を責め立てる彼女であったが、自分に断りもなく勝手に引き出しを開けて私物を調べるなんて、それこそ、下衆の極みじゃないかと、逆に激しく責め返してくる恋野の、どこまでも巧みで達者な口調に気圧されて、いつの間にか言い包められ納得させられていた。

愛憎関係というものは、実に摩訶不思議なもので、彼への憎悪心が増せば増す程、それに輪をかけるように、愛欲の心も烈火の如くに燃え上がって行った。

そうこうする内に、彼女の意識の中でどのような変革があったのかは判らぬが、周囲に向かって、たとえ如何なる障害が待ち受けていようとも、必ず恋野との結婚をなしとげると強く宣言した。
 
もちろん、マスコミに対して、ホストと結婚するなどと、彼女の多くのファンを失望させるような発言が出来るわけなど無く、ネオレディースのステージ脇にあり、他の席には会話が漏れ難く作られている広い卓で、彼女の取巻きや、恋野のヘルプたちを眼前にしての宣言であった。
 
その日から彼女は、恋野との結婚を目標として数多くのメディアへ出演し、ステージからステージへと走り回るようにコンサートをこなし、逞しいまでに、精力的に仕事を消化していった。恋野の方も満更では無かったのだろう、彼女との結婚を前向きに、真剣に捉えるようになっていた。
 
実際、ホストと有名人との結婚は決して珍しいことではなく、とりあえずホスト稼業からは足を洗わせて、歌手だの、俳優だの、ダンサーだの、時によっては青年実業家といったような、社会的に受け入れられる形の肩書を付けてから、入籍へと漕ぎ付けるのが常道である。
 
数か月の後、成人式の会場にも使われたことがある、都内でも有名なコンサートホールで、彼女の母親と、彼の母親や兄弟が顔を合わせることとなり、二人の結婚がようやく現実味を帯びてきた頃に、ある事件が勃発した。
 
初めの内それは、事件と呼ぶほどに大きなものではなく、有名ゴシップ誌の芸能欄に、彼女がホストクラブに入り浸り、No.1ホストに入れ込んでいるといった、ほんの小さな記事が載ったことであった。
 
その記事には、嫉妬心に駆られた時に表した彼女の醜態など、その場にいた者でなければ、決して知り得ない情報が細かく書かれていたことを考慮すれば、恋野のヘルプについていても売れずに辞めていったホストの誰かが、小金目当てに、ゴシップ誌へ売り渡したことが明白であった。
 
このような場合、ほとんどの芸能人は、たとえゴシップ記事の内容が全て真実であったとしても、それを完全に無視することで、知らぬ存ぜぬと自己保身につとめるのが常套の手段である。
 
しかし彼女は、この、ほんの小さな記事すらも赦すことが出来ないほどに、恋野への思いが強かったのだろうか。それとも、彼の理不尽な態度に耐えて来た過度のストレスが、感情の方向性を完全に見失わせてしまったのか。自分が、そのゴシップ誌を、力の限りに叩いてやると息を荒げてしまった。
 
こうなった時の彼女を制止することなど、恋野も含めて、周囲にいる人間には誰にもできないことであった。



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