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以前、血液がB型のホストを何人か紹介した。彼らは皆、ホストとしてのスキルは非常に高く、いい意味でも悪い意味でも、それなりの結果を出して仕事をこなしていたが、同じB型でも、彼らとは全く異なり、何故、ホストになったのかさっぱり判らない位に、ろくにお客もおらず、何年もドヘルプを続けている連中も多かった。

横浜から歌舞伎町に出戻った最初の店であるアラミスには、何年間も飽きもせずに毎日トイレ掃除をしている田岡がいた。お客が一人もいないばかりか、30歳をとうに過ぎても未だ童貞であった。

顔立ちはそれほど悪くもないが、どこかしら気持ち悪さを漂わせた雰囲気で、今で言うキモオタに近いものを持っていた。雀の涙ほどしか貰えないドヘルプの給料では、とうてい飯が食えない代わりに、絵描きの才能があったのか、似顔絵で生計を立てていた。

お客をつくれる可能性は殆んどなく、どうして辞めないのかを古参のホストが訊ねたところ、実に嬉しそうな表情で、「この仕事が好きだからです」と素直に答える彼の姿には、何とも言えない哀れさを感じさせられた。

赤坂のネオレディースでは、浅草のホストクラブから移って来た、チビでデブで歯抜けの上に、控室ではメガネを掛けて、売り上げもないのに囲碁や将棋ばかり指していたホストの小松が在籍していた。

一応はダンスも踊れ、それなりにヘルプをこなしていたが、どこをどう見ても、彼のように不細工な容姿のホストでは、売れる可能性などこれっぽっちも見出せなかった。実際、私がネオレディースで営業した約三年の間、彼が指名された姿は一度しか見ていない。

そして、横浜のナイトプリンスにおいては、スーツの肘が擦れて、大きく切り裂けていても、それを全く気にせずに、平然とお客の卓に付いてヘルプをするB型ホストが二人もいた。

いくらマイペースな気質と言われるB型でも、最低限の身だしなみがあるだろうと呆れていたが、彼ら二人にとっては、そんな事などはどうでもいいと感じていたのか、或いは受けを狙っていたのか、それとも、お客の母性本能を刺激することで、強烈な自己アピールを演出していたのか、或いはそれ以外の理由があったのか、私にはさっぱり分からなかった。

しも膨れで不細工顔のホストは店名を田端と言い、彼と口を聞いたことが殆んどないので、どの位のホスト経験があるのかは不明であったが、私が入店した当初も、横浜では新人扱いの七時出勤であったことから、売り上げが殆んどなかったことは理解していた。

もう一人は氷室の店名で、周りのホストの多くから、どうしようもないバカと呼ばれていた。初めて彼と同じ卓に座った時には、妙に馴れ馴れしく話しかけて来たのだが、支離滅裂なばかりか話が矢鱈と飛び、彼なりの持論となるホストの心得を論じていたかと思うと、矢継ぎ早に過去の喧嘩の自慢話をする。中身が薄っぺらで内容がなく、その会話は時間の無駄としか感じられなかった。
 
切れると何をしでかすか判らない、危険な部類のB型であることは聞かされていたので、なるべく近くに寄らないように努めた。見る人によっては白痴をも思わせる氷室であったが、男女間の機微と言うものは理解できないところが多々あり、こんな彼にも、優秀な女医がお客に付いていたことには驚かずにいられなかった。

一体全体、どのように知り合って、どんな会話が成立しているのか多少は気になったが、触らぬ神ならぬ、触らぬバカに祟りなしと、そんなことには興味を持たぬように心掛けた。

私が次に移った店、福富町のアマルフィへ彼も転籍してきたことを知ったのは、当時の新聞記事で大きく扱われたが、◯◯会系のヤクザが十数人掛かりで、相手の素性もわきまえずに飲み屋でからんだ挙句、一人で飲んでいたその組員に喧嘩を売った会社員の酔客二人を、ポケットベルで緊急招集をかけて、総勢で袋叩きにした夜であった。

ヤクザ連中はそれだけでは気分が修まらなかったのか、一人を真冬の大岡川へと投げ込み、もう一人を、ビル建築現場で掘削された深い溝に放り込んだ。運がいいのか悪いのか、二人とも瀕死の重傷を負ったが、命に別状はなかった。歓楽街で喧嘩を売るときは、しっかりと相手を見極めておかないと、とんでもなく危険な目に遭うことがよく解る事件であった。

この時、5階の控室で休憩していた私の前に、ズボンも上げずにトイレから出て来た氷室は「大変だ! 喧嘩だ、喧嘩だ!」と喚きながら、大慌てで表に飛び出して行った。その行動に些か驚かされて窓を開けると、険しさを匂わす男たちが怒鳴り散らす声と、その場から逃げようとする悲鳴にも近い叫びが聞こえた。

どうやら、トイレの窓が開いていたため、氷室には、その怒声や喚声が耳に入ったのだろう。しかしながら、まったく縁もゆかりもない修羅場へ身を投じようとする彼の感性は、B型だからと言うだけでは到底に理解できないものがあった。

なぜか、その後の氷室の記憶が全くとして残っていない。生きているのか死んでいるのか、その時の騒動に巻き込まれて、怪我を負ったのかなどの記憶がひとかけらも残っていないのだ。これはもしかしたら、触らぬバカに祟りなしと、私の中で無意識に、彼の記憶を抹消しているのかも知れない。



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