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早朝まで飲酒することも多々あるホストだが、売れっ子になると自家用車で通勤するものが多い。
 
ナンバーを張っていて、高額ボトルをお客に取らせることで、それなりに売り上げもあり、全く飲む必要がないのに、当時の私を含めて、どうしても酒を口に運んでしまうものもいる。
 
その中には、酒気帯び運転だけではすまずに、自損事故や人身事故を起こすものもおり、終いにはひき逃げで逮捕されたものも一人や二人ではない。
 
早朝の歌舞伎町の区役所通りで、出勤途中の女性区役所員をひき殺して逃げたものや、朝方、千葉市の市道で78歳の女性を轢き、飲酒運転がばれるのを怖れて逃走したホストなど、詳しく調べ上げれば、相当な数にのぼるのではないだろうか。

『巣窟』で紹介したように、伊勢佐木長者町のナイトプリンスには、癖の強いホストが実に多く集まっていた。
 
当時流行り始めた日焼けサロンに通い詰めていたのか、アフロヘアーと真っ黒に焼けた顔に、ギョロ目と笑った時の白い歯が、異様な雰囲気を醸し出していた川奈は、飲酒運転で人を轢き殺したことを自慢気に話すことがあった。
 
控室でその話を私に語った時の川奈は、満面の笑顔をつくりながら、目だけは特異な怒気を含んでいた。

ある時、川奈本人ではなく、別のホストからその事件の一部始終を聞かされた。

それは、数年前の出来事だったそうで、その日は気分が良かったのか、店でけっこうな量のブランデーを飲んで、いささか足元もふらついている状態の川奈であったが、そんなことなどまったくお構いなしに、未明の国道で上得意のお客を、彼のアメ車で送っている時だった。
 
一瞬、タイヤが何かに乗り上げた様な違和感を感じた川奈は、直ぐにルームミラーを見上げた。後方の道路上には、犬や猫ではなく、誰の目からもはっきり人間とわかる状態で、仰向けになって苦しんでいる人の姿を確認した。
 
酔っ払い運転での人身事故を起こしたことに動転した彼は、交通刑務所になんか行ってなるものかと、ブレーキではなくアクセルに力を入れた。
 
いつもの場所にお客を降ろすと、直ぐに自宅に向かい、部屋に篭ると警察が踏み込んで来ることを怖れて、布団を頭からかぶってガタガタ震えていたそうだ。

横浜でも滅多に見ないアメ車のタイヤ痕から足がつき、直ぐに彼のマンションに警察がやって来て、ひき逃げ犯として逮捕された。

ところがである。普通なら新聞沙汰になりそうな事件であったが、同乗していたお客が雇った弁護士の腕と、内臓破裂で亡くなった被害者が浮浪者であって、故意に道路上に寝ていたことが分かったことにより、警察側で身元を調べて連絡をつけた親族へ、わずか300万円の示談金を支払うことで民事上の決着も付き、数日間の拘留で釈放された。
 
哀れな被害者は、親族にとって相当な厄介者であったようで、驚くことに、彼に対して同情心を持っているようにも見えたそうだ。
 
『色男、金と力は無かりけり』とは昔から言われているが、売れっ子ホストはお客が持っている金と力を利用して、様々な難局を潜り抜け、生き残り、中には他の世界に進出して成功を収める者もいる。
 
実際、川奈がおこした行為は、人間として見たら最低である。しかし、一人のホストとして女性の視点から見たら、放っておくと何をしでかすかわからないといった、したたかなまでに母性本能を刺激する手段として、ひとつの看板になっていた。



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